先日の授業で、英文を一文ずつ読んでいたときのことです。
AIには、英文の訳を完成させるのではなく、読むときに注意する単語や文のつくりを、中学生にも分かる言葉で説明するよう頼みました。
ポイントを確認したら、AIの画面に出ている説明を写すのではなく、生徒が自分で訳します。訳した後に合っているかを確かめ、違ったところを直す。第一段落まで進んだところで、今度はAIに確認問題を作ってもらいました。最後は、同じ内容をもう一度、自分の言葉で説明します。
授業中にこの流れを試しながら、「これなら家でも使える」と思いました。
AIに勉強を代わってもらうのではなく、AIを使った後に、自分でできることを一つ増やす。
夏休みに勧めたいのは、こちらの使い方です。
AIは「分かった気」を作るのがうまい
AIに問題を送れば、完成した答えがすぐに返ってきます。説明も整っているので、読んでいる間はよく分かったように感じます。
ところが、画面を閉じて同じ問題をやってみると、手が止まることがあります。説明が分かったことと、自分でできることは同じではありません。
高校生約1,000人を対象にした数学の研究でも、通常のチャット型AIを使った生徒は、AIを使える練習中にはよく解けた一方、AIなしの試験では成績が下がりました。答えを直接渡さず、ヒントを出すように設計したAIでは、その悪影響がほぼ見られませんでした。
AIを使うかどうかより、どの順番で使うかを先に決めておきたい。授業をしながら気になったのは、そこでした。
家で再現するなら、3つの場面に分ける
7つの動きがありますが、覚えるのは「AIを開く前・使っている間・閉じた後」の3場面です。

AIを使う時間だけでなく、使う前と閉じた後までを一つの学習として考えます。
AIを開く前
最初に、30秒から3分ほど自分で問題を見ます。
- 分かるところと、止まったところに印を付ける
- AIには、答えではなく「最初のヒントを1つだけ」と頼む
何も手掛かりがない単元で、長く悩み続ける必要はありません。その場合は、目の前の問題の答えではなく、似た例題や最初の一手を見せてもらいます。
AIを使っている間
ヒントを読んだ後が、本番です。
- AIの画面から目を離し、自分で訳す・解く・書く
- できたら、今の内容から確認問題を1問出してもらう
- 正しさは、教科書、学校の解答、先生の説明でも確かめる
問題の写真を送る場合は、最初に「読み取った問題文をそのまま書き出して」と頼みます。AIが問題文を読み違えたまま説明を始めることがあるからです。
確認問題は、1問ずつ出してもらいます。自分が答える前に正解を表示させないのがコツです。
AIを閉じた後
最後の2つは、AIがなくてもできます。
- 「なぜその答えになるのか」を、自分の言葉で説明する
- 翌日、AIもノートも見ずにもう一度やる
英語なら「なぜこの訳にしたのか」、数学なら「なぜこの式を立てたのか」。うまく説明できなかったところが、次に戻る場所です。
その日に一度できただけで終わらず、翌日や数日後にも戻る。昨日は分かったのに今日は出てこない、ということは普通にあります。そこで思い出そうとすることも勉強の一部です。
最初に、この文章を貼っておく
特別な設定がなくても、新しいチャットの最初に次の文章を貼れば始められます。
あなたは私の学習を手伝うコーチです。答えや完成した訳を最初から出さないでください。まず、私がどこまで分かっているかを確認してください。困っているときは、ヒントを1つだけ出してください。私が答えるまで正解は表示しないでください。最後に、理解を確かめる問題を1問ずつ出してください。正誤は、教科書や学校の解答でも確認するように伝えてください。
AIが途中で答えを出してしまったら、「まだ答えは出さないで」「ヒントだけに戻して」と止めます。AIのペースに合わせる必要はありません。
中学生と高校生で、少し使い方を変える
中学生は、1問、英文1文、教科書の1項目など、短い範囲から始める方が使いやすいと思います。指示文も毎回同じで構いません。AIの説明が正しいか、教科書や解答と一緒に見るところまでを一組にします。
高校生なら、自分の答案の論理が飛んでいる場所を質問してもらう、複数の解き方を比べる、模試後の計画に無理がないか点検してもらう、といった使い方もできます。
ただし、高校生でも初めて学ぶ単元では、短い範囲と一つずつのヒントに戻ります。学年よりも、その内容をどこまで理解しているかで変えた方がうまくいきます。
今のところ、Geminiは使いやすい候補
中高生に紹介するAIとして、アルクではGeminiを候補に考えています。
問いかけを挟みながら学ぶGuided Learning、ノートや教材画像の読み取り、内容に合わせた確認問題など、今回の方法と組み合わせやすい機能があるためです。利用できるアカウントでは、同じ指示を繰り返し使うGemも設定できます。
一方で、使える機能は年齢やアカウントの種類によって違います。学校用・管理対象アカウントでは使えない設定もあります。有料プランやファミリープランに入っても、未成年者向けの制限がすべて外れるわけではありません。
そのため、この記事の方法は有料機能を前提にしていません。Gemやカスタム指示が使えなくても、先ほどの文章を新しいチャットに貼れば使えます。
問題を送る前に、ここだけは確認する
教材の写真を使うなら、氏名、学校名、点数、顔、受験番号などが写っていないかを先に確認します。AIの回答だけで正誤や進路を決めないこと、作文やレポートを完成品のまま作らせて提出しないことも約束にしておきたいところです。
文部科学省も、児童生徒が生成AIを使うときは、発達段階や情報活用能力に配慮し、リスクへの対策を講じる必要があるとしています。

AIが得意な補助と、人と一緒に決めたい学習設計は分けて考えます。
塾生は、金曜日のSLで相談してください
ここまで書いたのは、どの教科にも使える基本形です。実際には、英語長文に使う指示と、数学の文章題に使う指示は変えた方がよいです。基礎を学び始めた生徒と、入試問題を解いている生徒でも、AIに出してよいヒントの量が違います。
アルクの塾生で試してみたい人は、金曜日のSLのときに相談してください。SLは、その週の勉強を振り返り、次に何をどう進めるかを整える時間です。
普段使っている教材を見ながら、最初の指示文を一緒に作ります。アカウントによってGemが使えるなら設定し、使えなければ毎回貼る文章を用意します。そこで終わりではなく、翌週に「本当に一人で使えたか」「AIを閉じた後に説明できたか」まで確かめます。
AIの操作方法を教えるだけでは、たぶん足りません。どこでAIを開き、どこで閉じるか。その順番まで一緒に決めるところが、学習の設計だと考えています。
参考にした資料
- Bastani et al. (2025), Generative AI without guardrails can harm learning
- Karpicke & Roediger (2008), The Critical Importance of Retrieval for Learning
- Chi et al. (1994), Eliciting Self-Explanations Improves Understanding
- 文部科学省「生成AIの利用にあたって」
- Google「Gemini app features that support students」
- Google「Get started with Gems in Gemini Apps」
※Geminiの機能・対象年齢・アカウント条件は2026年7月17日時点で確認した情報です。利用時にはGoogleの最新案内をご確認ください。