アプリの画面が動くと、そこで完成にしたくなります。でも、自由研究としては、ここからがまとめです。
アプリは「作ったもの」です。自由研究で伝えたいのは、何を確かめたくて、どんな予想を立て、試した結果をどう考えたかです。
この連載で試したのは、話し言葉に近い文章を文字入力し、「夏休み残り10日の学習計画アプリ」を3回直すところまでです。音声入力やスマートフォン実機、中学生本人の操作は試していません。最終回では、実際に残った記録だけをレポートの形にします。
「アプリが動いた」は、結果の一部
自由研究の題名を「Geminiでアプリを作った」にすると、完成した画面の紹介で終わりやすくなります。
今回の問いは、もう少し具体的です。
話し言葉に近い指示だけで、中学生向けの学習計画アプリの試作品を作れるか。
この問いがあると、見たいものが変わります。
- 指示は何回で使える形まで伝わったか
- 自分で音声入力も試す場合、どこを文字修正したか
- 最初の画面のどこが使いにくかったか
- 指示をどう言い直すと画面が変わったか
- 完成した計画は、実際に無理なく使えそうか
完成画面は大切です。ただし、それだけでは「なぜそうなったか」が見えません。修正前の画面や、うまく伝わらなかった指示も、研究の材料になります。

完成画面だけでなく、問い・指示・失敗・修正・結果まで並べると研究になります。
まず、作っている途中の記録を集める
きれいな文章を書く前に、Canvasの履歴、スクリーンショット、手元のメモを確認します。
- 最初の問いと予想
- 実際に送った指示
- 最初と最後の画面
- 直した理由
- 数字を入れて確かめた結果
音声入力も試した場合は、聞き取り違いを直した場所も残します。
スクリーンショットには、氏名、学校名、アカウント画像、メールアドレスなどが写ることがあります。レポートへ入れる前に切り取るか、見えないようにしてください。
画像が多ければ、全部を載せる必要はありません。「最初」「大きな修正」「完成」の3枚を選ぶだけでも、変化は伝わります。
問いと予想は、作り始める前の言葉に戻す
完成した後では、最初からうまくいくと分かっていたように書きたくなります。でも、研究では途中で予想が外れても困りません。
研究の問い
話し言葉に近い指示だけで、中学生向けの学習計画アプリの試作品を作れるか。
最初の予想
作るもの、入力するもの、表示するもの、使う人を順番に説明すれば、コードを書かなくてもアプリの形までは作れると思う。ただし、宿題の優先順位や一日にできる量は、AIだけでは決められないと思う。
ここは、実際に始める前に自分が考えていたことへ戻します。結果に合わせて予想を書き換えない方が、後の考察が書きやすくなります。
指示は、成功したものだけを残さない
今回の実演では、文字入力した指示に対して、AIが意図と違う画面を作ることがありました。自分で音声入力も試す場合は、話した内容と文字になった内容の違いも記録に加えられます。
表にすると、制作の過程が見えます。
| 回 | 伝えたこと | AIの反応 | 自分で直したこと | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 必要な入力、表示、大きなボタン、個人情報を入れないこと。「スマートフォンの中だけで動く」という条件 | 3画面のアプリが動いたが、見本データと「絶対に終わる」が入った | その場では完成にせず、曖昧な保存条件も後で確認した | たたき台ができた |
| 2 | 見本を消す、言い切らない、音声入力案内、紺・白・黄にする | 初回案内と空の宿題一覧へ変わった | 24ページ・3時間・残り10日を入力した | 1日2.4ページ、約18分と表示された |
| 3 | 絵文字欄の不具合、計算上の目安という表現、単純計算の注記 | 指定した表示と注記へ変わった | コードを検索し、保存先と外部送信処理を確認した | 3回の指示で公開せずに検証を終えた |
「一回でできた」とまとめるより、どこで指示を言い直したかが分かる方が、AIへ伝えるときのコツを説明できます。
修正前と修正後は、同じ条件で比べる
見た目が変わっただけでは、使いやすくなったかは分かりません。最初の画面と修正後の画面に、同じ宿題を入力して比べます。
- 残り日数
- 宿題の数
- それぞれにかかる時間
- 教材にかかりそうな合計時間
- 試した画面幅や端末(実機で試した場合)
その上で、「入力が終わるまでにかかった時間」「押し間違えた回数」「作られた計画に無理がなかったか」などを、実際に測った場合だけ記録します。今回の実演では時間と押し間違い回数は測っていないため、結果には加えません。
結果は、実際に測った数字で書きます。まだ試していないことを、AIの予想だけで埋めないようにします。一つの条件で試しただけなら、「多くの人に使いやすいと分かった」ではなく、「この条件で試したところ、こうなった」と範囲を限って書きます。
考察は「便利だった」の次を書く
感想と考察は似ていますが、少し役割が違います。
感想
話し言葉に近い文章を文字入力するだけでも、アプリの画面が作れて便利だった。
考察
最初の指示でも、残量を日数で分ける画面はできた。しかし、頼んでいない見本データと根拠のない言い切り表現も入った。消すもの、残すもの、加えるものを具体的に伝えると画面が変わった。AIに一度で作らせることより、出力を確認して修正理由を言葉にすることが結果を左右したと考えられる。
考察では、「予想と何が違ったか」「どの指示で変わったか」「まだ分からないこと」の三つを書けば十分です。
うまくいかなかったことを消す必要はありません。「見本データが勝手に入った」「根拠のない言い切りがあった」「コードに小さな不具合があった」。こうした出来事から、次の改善点が出てきます。音声入力も試した人は、別の言葉に変換された記録も加えられます。

「作った順」と「書く順」をそろえると、自分の判断が見えやすくなります。
AIを使ったことは、隠さず記録する
AIを使ったなら、使ったと書きましょう。隠す必要はありません。サービス名、利用日、送った指示、出てきたもの。最低でもこの4つを残します。最後に、自分で判断して直したところを書きます。
レポートの最後に、次の欄を設けます。日付や指示は見本のものを写さず、自分が実際に使った記録を書きます。
- 使用したサービス:[実際に使ったサービス名]
- 利用した日:[ 年 月 日]
- AIへ頼んだこと:[実際に頼んだ内容]
- 主な指示:[送信した文章]
- AIが出したもの:[画面、コード、文章など]
- 自分で決め、確かめ、直したこと:[自分が行った判断]
- 確認に使った資料:[公式ページ、学校の案内など]
学校やコンクールによってルールは違います。AIの文章や画面をそのまま提出する前に、提出先の決まりを確認してください。文部科学省のガイドラインでも、AIの出力を参考の一つとして扱い、最後は人が判断する姿勢が示されています。
提出用レポートは、この順番なら組みやすい
先に見出しだけを書き、手元の記録を当てはめていきます。最初から文章を順番に書こうとすると止まりやすいので、スクリーンショットや表を置いてから、その前後を説明する方が進みます。
記事の中では、次の8項目で十分です。
- 題名
- 問いと予想
- 使ったものと方法
- 指示と修正の記録
- 結果
- 考察
- 分からなかったこと・次に試したいこと
- AI利用記録・参考資料
提出用レポートひな型
1.題名
[何を作り、何を確かめた研究なのかが分かる題名]
2.問いと予想
問い:今回確かめたいのは、[実際に答えを確かめられる疑問]か、ということです。
予想:始める前は、[どうなると思ったか]と予想しました。理由は、[そう考えた理由]です。
3.使ったものと方法
使ったもの:[AIサービス、端末、ノート、タイマーなど。氏名やアカウント情報は書かない]
方法:①[最初にしたこと]→②[AIへ指示したこと]→③[確かめたこと]→④[直したこと]
比較するときにそろえた条件:[残り日数、宿題の量、試した回数など]
4.指示と修正の記録
| 回 | AIへ伝えたこと | 出てきたもの・起きたこと | 自分で確かめ、直したこと |
|---|---|---|---|
| 1 | [ ] | [ ] | [ ] |
| 2 | [ ] | [ ] | [ ] |
| 3 | [必要な場合] | [ ] | [ ] |
音声入力を使った場合は、正しく文字にならなかった言葉と、送信前に直した内容も残します。使っていない場合は、音声認識を試したとは書きません。
5.結果
[実際に表示された数字、かかった時間、できた機能、できなかった機能を書く]
測っていない数字や、AIが予想しただけの結果は入れません。画像を載せる場合は、アカウント名やメールアドレスが写っていないか確認します。
6.考察
最初は[予想]と考えていました。実際には[結果]でした。[どの指示・条件]を変えた後に[起きた変化]があったため、[結果が変わった理由について自分が考えたこと]と考えます。
7.分からなかったこと・次に試したいこと
今回は[試した人数、回数、端末などの範囲]だけなので、[まだ言えないこと]までは分かりません。
次に行うなら、[変えたい条件・追加したい確認]を試したいです。
8.AI利用記録・参考資料
使用したサービス:[ ]
利用した日:[ 年 月 日]
AIへ頼んだこと:[ ]
主な指示:[実際に送信した文章]
AIが出したもの:[画面、コード、文章など]
自分で決め、確かめ、直したこと:[ ]
参考にした資料:[資料名/作成者や運営者/URL/確認日]
指示と修正は、「伝えたこと/出てきたもの/自分で直したこと」の3列にすると並べやすくなります。結果には、実際に表示された数字だけを書きます。音声入力を使っていないなら、音声認識を試したとは書きません。
このひな型を全部埋めることが目的ではありません。学校から書き方や枚数の指定がある場合は、そちらを優先します。AIの利用が認められているかも、提出前に確認してください。
保護者は、文章を直すより「どこで決めた?」と聞く
大人が文章を整えすぎると、本人の研究だった部分が見えにくくなります。
「これはAIが決めたの? 自分で決めたの?」
「最初と最後で、どこが変わった?」
「次に試すなら、条件を何にする?」
答えに詰まったところが、レポートに説明を足す場所です。きれいに書き直すことより、本人が自分の判断を話せるかを確かめてください。
塾生は、金曜日のSLで記録を一緒に整理できます
作ったアプリを見せるだけでなく、最初のメモ、Canvasへ入力した指示の履歴、修正前後の画面を持ってきてください。自分で音声入力も試した場合は、その記録も一緒に残します。
アルクの金曜日のSLでは、「何を作ったか」だけでなく、「どの記録を根拠に、何が分かったと言えるか」を一緒に整理できます。AIが書いた文章へ置き換えるのではなく、本人が行った判断を拾い、提出用の順番へ並べ直します。
アプリの出来より、「最初はこう考えた。試したら違った。だから直した」と本人が説明できる方が、私は大事だと思います。金曜日のSLでは、その順番を一緒に作ります。
参考にした資料
※本文の情報は2026年8月14日に確認しました。生成AIの利用条件や学校・コンクールの規定は変わる場合があります。実際に取り組む際は、提出先と利用サービスの最新情報を確認してください。